北信小谷村/旧鬼無里村(長野) 奥東山(1830m)、東山(1849.3m)、黒鼻山(1800.4m) 2017年4月30日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 4:39 駐車場−−4:41 ゲート−−4:59 林道を離れる(1212m標高点)−−5:08 元池沢−−5:22 滝(標高1320m)−−6:30 1692m鞍部−−7:09 奥東山−−7:21 1720m鞍部(ワカンをデポ)−−8:01 東山−−8:17 1690m鞍部−−8:47 黒鼻山(最高点)−−8:50 黒鼻山三角点−−9:07 標高1780m(休憩) 10:08−−10:18 1690m鞍部−−10:47 東山−−11:11 1720m鞍部−−11:32 奥東山−−11:40 稜線を離れる−−11:55 滝(標高1320m)−−12:09 林道−−12:18 ゲート−−12:20 駐車場

場所長野県長野市(旧鬼無里村)/北安曇郡小谷村
年月日2017年4月30日 日帰り
天候快晴
山行種類残雪期の山
交通手段マイカー
駐車場奥裾花自然園ゲート前駐車場に駐車
登山道の有無1692m鞍部〜奥東山までは夏道あり。奥東山〜東山間は踏跡程度の道あり。東山〜黒鼻山は道無し
籔の有無残雪のためほぼ皆無
危険個所の有無稜線上は小谷側に切れ落ちた場所多数あり。滑落すると命が無いので要注意。旧鬼無里側は比較的なだらかな地形が多い。奥東山付近は傾斜がきつい。元池沢最上部は雪庇崩壊のブロック雪崩注意
山頂の展望今の時期はどの山頂も大展望
GPSトラックログ
(GPX形式)
ここをクリックしてダウンロード
コメント奥裾花自然園駐車場から黒鼻山を往復。ショートカットのため最初は夏道を使わず元池沢を遡上して1692m鞍部で夏道のある稜線に出た。夏道はほとんど積雪で埋もれた状態だが、奥東山直下の岩壁帯は雪が落ちて夏道が出ていた。東山〜黒鼻山間は比較的なだらかな雪稜が続き展望を楽しめながら歩けた


東山から見た黒鼻山。極楽の雪稜が続く


早朝の駐車場。南側の未舗装エリアに駐車した 北側の舗装された駐車場。登山者の車が1台のみ
ゲート。この先は一般車進入禁止 今回は自然園まで行かないかも(まだ決めていなかった)
林道から見た堂津岳 元池沢。滝がありそうでとりあえず見送る
ショートカット優先でリスク覚悟で元池沢へ転進 元池沢。下流は堰堤の連続。。雪が締まりアイゼン装着
左岸で堰堤を高巻き 堰堤が終わると沢の中を歩ける
滝が登場。右岸を高巻き 時々流れが顔を出す
谷が広がると安全地帯。進路を右へ 1692m鞍部目指して歩く
1692m鞍部直下 1692m鞍部で稜線へ乗る
右側の小谷側へ落ちると命は無さそう 僅かに夏道が出た個所も
黒鼻山はまだ遠い
振り向けば堂津岳への稜線 奥東山直下。雪が落ちた岩壁帯だが夏道のロープ利用可
奥東山山頂
奥東山から見たパノラマ展望(クリックで拡大)
東山向けて出発 山頂直下の下りは急すぎて東を巻いた
1720m鞍部から南を見上げる。ここでワカンをデポ 1780m峰から奥東山を振り返る
1780m峰から見た東山
1840m峰から見た東山
東山山頂直下は笹が出ているが夏道あり 東山山頂
東山から見たパノラマ展望(クリックで拡大)
東山から見た黒鼻山。痩せ尾根は見えず安心して歩けそう
東山南直下のみ雪が落ちている(帰りは西を迂回) 藪は20mほどで快適な雪稜に復帰
1690m鞍部 カモシカの足跡
2重山稜の広い尾根 奥のピークは偽ピーク
南には八方山。今の時期ならあの藪も雪の下 雪が無ければ笹と根曲がり竹
黒鼻山最高点。三角点より北にあり 黒鼻山三角点から最高点を見る
黒鼻山三角点から見たパノラマ展望(クリックで拡大)
黒鼻山三角点から南を見る
三角点の山頂標識。積雪量不明で設置時期不明 三角点の荷造り紐目印。古くボロボロ
たぶん真木集落 2重稜線の凹みで風を避けて休憩
下山開始。往路を戻る 雪崩で行方不明者捜索中の白馬大雪渓
東山直下の藪は西から迂回 西側は薄いダケカンバ
帰りの東山山頂 東山から見た1840m峰
1840m峰から北側を見る
南側から見る奥東山。西側は切れ落ちている 1720m鞍部でワカンを回収
奥東山へ急登 東尾根から回り込んで山頂へ
帰りの奥東山山頂 山頂から元池沢を見下ろす
奥東山山頂から北側を見ている
奥東山北側直下のフィックスロープ 1810m峰手前の雪庇切れ目から下ることに
ここから下った 急だが雪が緩んで適度なブレーキがかかる
崩壊したばかりの雪庇もあった 元池沢へと下っていく
滝の上部。往路同様右岸を高巻き 真新しいブロック
帰りは右岸で堰堤高巻き 最後は左岸へ渡って林道へ
林道に出る ゲートは開いていた
駐車場。オープンしたばかりでまだ客は少ない 帰りの県道沿いの斜面でカモシカ発見


 ネットで黒鼻山を検索すると東北の山がうじゃうじゃ出てくるが、長野の黒鼻山の登頂記録はDJF氏の1件のみ(クリックで記録にジャンプ)。登山道が無いのでほとんど登られない山だとは思っていたが、ネットでもここまで記録が見られない山は珍しい。姫川(小谷村)/裾花川(旧鬼無里村=現長野市)を隔てる稜線上にある。この南北に長い稜線を代表する山は堂津岳で、黒鼻山はその南方にある。この稜線上の地形図記載の山で私の未踏峰は黒鼻山だけある。旧鬼無里の奥裾花自然園から東山及び堂津岳手前まで夏道が開かれた(正確には復活した)が、東山以南は道は無いまま。DJF氏は無雪期に小谷側から登っているが、山頂部は猛烈な藪だという。八方山の経験からもこれは容易に推測できる。なお、東山までは以前無雪期に登ったことがあるが記憶にはほとんど残っていない。

 黒鼻山の主稜線は東西どちらも切り立っている場所が多いが、特に小谷側は厳しい。よりによってDJF氏はその等高線が密集した小谷側から往復しているが、予想通りの危険地帯とのこと。鬼無里側は多少はマシだが短距離ながら同等に近い傾斜の場所が途中に待ち受けている。どう登るかは長期間考えたが、安全に登るなら堂津岳登山道から尾根上を往復するしかないとの結論に達した。この場合、藪の深さを考えれば残雪期しかないだろう。

 今年は残雪が多く例年よりも大型連休でも雪が残って登れそうな山が多いが、連休前半は大気の状態が不安定で初日、3日目は荒れ模様の予報で好天は2日目の日曜日のみ。日帰りで有意義な残雪の山ということで黒鼻山を目指すことにした。本来はテントを背負って合ノ峰も合わせて登りたかったのだが、重荷を背負って稜線上で荒れ模様は勘弁してもらいたいので合ノ峰は諦めた。

 今年の奥裾花自然園へ通じる県道の開通は4/29日の連休初日。県道の通行可能時間は8:30〜17:00だが、以前の通行でゲートは無く看板だけなのは分かっているので安心して出かける。奥裾花ダム手前の小佐出集落の先から夜間通行止め区間が始まるがゲートは無く、看板が出ているだけで車止めも無い状態だった。日中は雨が降ったはずだが夜中は満天の星空だった。ダム管理事務所横を通過すると分岐があるが、登りは左の大きな橋、下りは右手からと一方通行になっていた。再び道が一本になると道の両側にちらほらと雪が現れるようになり、2か所ほどで路面に落ちてきた雪の塊が散乱していた。小規模な雪崩も想定の内だが気温が上がった昼間よりまマシだろう。

 やがて駐車場に到着。そのすぐ先でゲートが閉まっている。舗装された広い駐車場は観光客のために遠慮しておき、南側のダートの駐車場に車を入れて仮眠。下界は暑いくらいだがここでは気温は0℃近くまで下がって寒かった。しかし寒いことは残雪期の歩きにはいいことだ。夜中に上ってきたのは他に1台いただけだった。私と同じく登山者だろうが目的地は堂津岳だろう。

 翌朝、日の出前に出発。水たまりには薄氷が張っている。除雪された舗装道路を歩くので楽だ。北には雪をまとった堂津岳が見えている。周囲の斜面にも雪が残っているので、稜線上の残雪は心配なさそうだ。

 歩きながらふとアイディアが浮かんだ。当初計画では夏道で稜線に上がるつもりだったが、これだけ雪があればショートカットできるのではないかと。ここからだと元池沢が使いやすそうな地形で、稜線直下は急だが許容範囲の傾斜だろう。ただし、谷の途中で滝が無いとは限らない。元池沢入口では悩んだ挙句にパスして夏道を目指すことにしたが、ショートカットできればかなりの時間節約になる誘惑は強く、ヘアピンカーブから作業道らしき筋が谷方向へ延びるのを見て引き込まれてしまった。谷上部には滝がありそうな段差が見えているのだが・・・。

 作業道らしき筋はすぐに終わって元池沢へ下るが、いくつかの砂防ダムが見えていてその下流側は流れが出ているので高巻きが必要で、今は左岸側にいるのでそのまま左岸を高巻きすることにした。雪は良く締まって登山靴のエッジが効かないので10本爪アイゼンを装着する。今シーズンでこのアイゼンをまともに使うのは初めてだ。軽いのはいいが爪の長さが短いのかトラバースでは滑ることもあり気が抜けない。マジな山では重い12本爪じゃないとダメかもなぁ。

 砂防ダム群を通過すると流れが見えなくなるので谷底を歩く。数か所で雪が薄くなって穴が開いたり流れの音が聞こえたりする個所があり、歩きやすい期間は残り短そうだった。1か所だけ滝があり右岸側を巻いた。ここでまたアイゼンのグリップ力不足で爪が雪にかかっているのに滑落。でも高さ4,5mの急斜面で雪面には障害物も無く雪はほとんど汚れていなかったので被害はなかった。その後はピッケルにより頼るような登り方に切り替えた。滝を越えれば再び安全地帯で穴を避けながら遡上していく。

 標高1380mを越えると谷の幅が広がって広大な斜面に変わる。正面の斜面を登っても良さそうに見えるが、即席計画に従って右にあるはずの1692m鞍部を目指すことにする。樹林で鞍部は見えないが、顕著な尾根の左側の谷を詰めれば到達するはずだ。最初は谷の左側のブナが生えた微小尾根を登ったが、傾斜がきつくなりその後は谷を登った。ここでもアイゼンのグリップに不安を感じたが、雪面は微妙に荒れ凸凹ができ始めていて凹んだ部分に足を乗せれば滑ることはなく快調に高度を上げる。見上げると青空と残雪のコントラストが素晴らしい。

 1692m鞍部に到着。夏道があるはずだが雪に埋もれて形跡は見られない。イヤらしいことにこれから進む方向には雪が落ちた尖塔ピークが待ち構えている。奥東山に間違いないが夏道がどのように付いていたか昔の記憶がなく、接近するに従ってかなりビビる。最悪なのは山頂を巻いて反対側から山頂へ登るようなルート取りだった場合で、今は東西の急斜面とも雪に覆われて立木は無く、滑れば止めることは不可能だろう。

 稜線上はずっと雪に覆われていて夏道の存在が認められる場所はほとんど無い。立木もほとんど無くこの上天気では稜線上では日焼けは確実なので顔と耳、首に日焼け止めを塗った。この事態を考えて麦わら帽子持参も考えたのだが、もっと樹林があるだろうと予想して不要だと判断したがちょっと外したか。でも風が少し強いので今回は麦わら帽子は適当ではない。

 ナイフリッジと呼ぶほどではないが左手(鬼無里側)は雪庇で右手(小谷側)はそれなりの傾斜の雪面の個所が多く、ちょっとイヤらしい。特に小谷側は尾根上よりも少し落ちたところから急斜面に変わり、もし滑落すれば命は無いだろう。もし落ちるなら鬼無里側になるように東側寄りを進む。雪が良く締まってアイゼンの歯しかかからないくらいで歩くのは楽だが、今回のアイゼンではこの場面は頼りなく、重いが12本爪を持ってくればよかったと反省。まあ、ピッケルがあるので簡単には落ちないだろうけど。  奥東山手前の痩せた小鞍部から雪が消えフィックスロープが登場。岩が露出している。目の前は藪に覆われた急斜面で道があるようには思えないが、取り付いてみると藪の中に明瞭な道がありフィックスロープがぶら下がっている。夏道は尾根直上にあって一安心。手も使ってよじ登るような急傾斜で手に持ったピッケルがかなり邪魔であったが、灌木に掴まりながらクリアする。こんな場所は距離にして数10mしかなかった。

 灌木帯が終わると雪庇の奥東山山頂。尖った山頂なので展望は抜群。前回の展望の記憶が無いが、帰ってから自分の記録を読んだらガスって展望が無かったらしい。今回は天気も文句なしで西側は真っ白な後立山。犬ヶ岳〜青海黒姫山の稜線も小さく見えているが、私が登った頃より黒くなっているがまだ白さが残っている。今年の大型連休中に入山者はいるだろうか。焼山〜妙高山はまだ真っ白。戸隠連峰は西側から見ているので黒さが目立つ。やや空気の透明度が悪く、爺ヶ岳以南は霞んでしまっている。

 次は東山。目の前には左右に並んだ2つのピークがあるが、右側が東山だ。山頂までは小谷側が切れ落ちているのが見えるので、これまで同様要注意か。山頂からの下りはいきなりの急雪面で、まっすぐ下るのは無謀な傾斜であり左手(東)を巻くように下っていく。東に張り出した大きな尾根の影響で東側の傾斜は緩んでダケカンバも疎らに生えて安全に歩ける。急傾斜が終わるところで尾根上に復帰。右手の小谷側は絶壁上のはずだがこれまでと違ってそちら側は立木が連続し意外に怖さは感じなくて済んだ。左手の鬼無里側は緩い傾斜で谷へ落ち込んでいて、もし滑落しても容易に止められるだろう。それ以前に滑落するような厳しい地形は無いが。上下に細かくうねった雪庇の連続する尾根を下っていく。尾根直上よりも鬼無里側の雪庇直下を歩いた方が無駄なアップダウンが無い分お得かもしれない。

 1720m鞍部でワカンをデポすることにした。これまでの雪質からしてこの先も出番は無いだろう。先日大規模な雪崩があった白馬大雪渓では50cm以上新雪が積もったとのことでこちらでも新雪がある程度積もっているかと予想したが、あることはあるが厚さは数mmほどで日当たりのいい場所では全く見られなかった。やや風が強いがワカンなら飛ばされる心配は無いので鞍部のど真ん中に置いた。

 鞍部からの登り返しの傾斜はきついがアイゼンを効かせて快調に高度を上げる。雪庇に覆われた1780m峰で振り返ると奥東山の尖った姿が凛々しい。1750m鞍部へと雪庇に覆われた尾根を下り、鞍部からは幅広い尾根を登る。山頂東側の1840m峰への登り始めでは灌木が少々顔を出しているので東を巻く。1840m峰直下は尾根直上は笹が出ているのでこれまた東を巻いた。1840m峰てっぺん付近も笹が出ているので、往路ではてっぺんは残雪を利用して南を巻いて尾根に復帰する。東山山頂は目前であるが、山頂直下でこれまた笹が出ている。笹は南へとずっと延びていて雪を利用して巻くことはできないので突っ込むしかなさそうだが距離は10〜20m程度だろうし、夏道がまだあるはずだ。

 その笹の中には薄い踏跡があったが、この状態だと無雪期も笹が両側から被った状態だろう。笹が濡れた時には通りたくない状況だが、これがもし全くの道無し状態だと結構な籔漕ぎになるので踏跡程度でもあると大助かりだ。僅かな笹帯を抜ければ再び残雪にありつくことができ、雪庇の東山山頂に到着。ここも立木皆無で360度の大展望。南には広い稜線の黒鼻山が見えている。ここまで休憩無しで歩いてきたが黒鼻山までさほど距離も行程差も無いのでこのまま歩き続けることにした。見た感じではこれまでよりも尾根幅が広がって滑落の危険を感じるような場所は無さそうだ。

 東山からの下り始めは尾根直上は雪が落ちて笹と灌木が出てしまっているが距離は短そうなのでアイゼンのまま突っ込み、20mほどで再び残雪に乗る。振り返ると藪の西側は雪がつながっていてこちらを迂回すればよかったと後悔。この後はおだやかで快適な雪稜が続く。雪は締まって全く潜らず今シーズン最高のコンディションだ。天気は快晴、東寄りの風がややあるが体感温度を下げる程度で行動には問題は無い。

 1690m鞍部で稜線は西へと進路を変える。これまでもいくつか足跡があったがカモシカの足跡を追うように1754m峰へと広い尾根を上がっていく。新しそうに見えるが明瞭な深さで潜っているので今朝のものではなく気温が上がった昨日の日中のものだろう。そういえばカモシカの足跡は新潟の山の方がずっと多いなぁ。熊の足跡は明星山登山口付近で見てから全く見ていない。普通、4月に入ると熊の足跡は当たり前のように見られるのだが。

 1740m肩に乗ると広い2重山稜に変わり、今度は南に進路変更し東側の尾根を進んだ。今は晴れているからいいが、犬ヶ岳東尾根のようにガスった状態だと下りでは厄介な地形だ。先にはピークが見えているがまだ黒鼻山山頂ではなかった。その偽ピークに立つと、これまでの広い尾根が収束し南西へと細長く延びる尾根に変わる。南側には僅かに笹が顔を出した帯状の場所があり、濃い根曲がり竹が横倒しになっていた。今の時期はこれを漕がなくて済むのだからありがたい。

 GPSを見ると山頂はまだ先なので時々GPSの残距離を見ながら雪庇を進んでいくが、最高点と思われる周囲より僅かに高い場所に到着してもまだ山頂は先と出た。地形図を広げると三角点のある山頂が最高点のように見えるが、GPSのお告げを信用して南西にさらに進み、一段下がった尾根幅が広がった場所がGPSの指し示す三角点位置だった。積雪は1m以上はあるだろうから三角点探索は不可能で雪面上には形跡皆無。しかし意外なことにダケカンバの雪面に近い場所にグラスファイバー製の古そうな山頂標識を発見。積雪量が分からないので残雪期に付けられたものか無雪期に取り付けられたものか判断に迷う。今年は積雪量が多いはずなので例年の積雪量の時期に取り付けたとしたら雪面付近にあっても不思議ではない。DJF氏の記録にはこの標識は登場しないが、山頂付近周囲は同じような高さの地形の連続であり、無雪期の背丈を越える藪の中ではピンポイントでこの木の横に立たない限りは見つけるのは困難だろう。それにもしDJF氏が本当の最高点に立っていたならば見つけられるはずは無いが。同じダケカンバの枝にはボロボロになった荷造り紐が括りつけられていた。

 山頂付近では風除けが無く休憩には寒いので2重山稜まで戻り、凹地で寝転がって休憩した。風はあっても天気はよく日当たり最高なので、風が避けられる場所は快適だった。薄手の銀マットを持ってきたのでザックと合わせれば雪の上でも暖かく横になれる。帽子を顔の上に置いてしばし昼寝。今日は大気の状態は安定しているので昼寝しても安心だ。

 下山開始、往路を戻る。東山手前の1720m鞍部でデポしたワカンを回収。結局、今回は下山までワカンの出番は皆無だった。まあ、これこそ残雪期最盛期なのだが。今年は長期間スノーシューが活躍したが、今後は標高が高い場所で新雪がまとまって降らない限りは出番は無いだろう。

 東山直下の藪は西側から巻いて山頂へ。奥東山直下の登り返しは往路同様に東から巻いて山頂へ。北側のフィックスロープが付いた急傾斜区間は何故か下りの方が簡単に感じた。往路では中西山西側の1692m鞍部で主稜線に出たが、帰りはショートカットで雪庇が切れた1810m峰手前から元池沢へと向かった。この時間帯になると雪が適度に緩んで急傾斜雪面でも適度に沈んでブレーキがかかり滑落の危険性はぐっと減るが、稜線の雪庇が緩んでブロック雪崩の危険性は高まる。現に下降点のすぐ南側の雪庇は崩れたばかりの白い断面を見せていた。下りながらも背面には常に気を配り耳をそばだてる。いい傾斜なので勝手に足を動かすだけで走るような快速で下れるが、ブロック雪崩の速度にはかなわないだろう。広い谷の真ん中ではなく雪庇が少ない北側を下った。傾斜が緩まればもう安全地帯、ここまではブロックも転がってこないだろう。

 谷が狭まり滝は往路同様に右岸を高巻き。この下りだけはバックで下った。堰堤群は往路とは逆に右岸側を高巻きし谷沿いを最後まで下って林道へ。林道の手前で歩きやすい左岸側へ移動して林道に降り立つ。ちょうど登りのバスが通過したところだった。アイゼンを脱いでピッケルと一緒に手にぶら下げて舗装道路を歩いていく。ゲートは開いていたがこれはバスが通過するためだろう。駐車場の車は20台くらいに増えていたが駐車場の広さと比較すればガラガラだった。まだ残雪が多くたぶん水芭蕉もまだ雪の下ではなかろうか。バス停から離れた砂利の駐車場は私の車だけだった。


 まとめ。黒鼻山に登るならやはり残雪期が圧倒的に楽で安全だった。今年は雪の量が例年より多いはずなので藪漕ぎも例年より少なかった可能性はあるが、それでも夏道が消える東山以南の尾根幅は広く残雪が消えるには時間がかかりそうで、奥裾花自然園開園直後なら割と楽に往復できるだろう。幕営装備で堂津岳と合わせて登るのが効率的だろう。数は少ないがバスの便があるので、黒鼻山から南を目指して柄山や柳沢峠南側の東山まで縦走するのも面白そうだ。

 

都道府県別2000m未満山行記録リスト

 

日付順2000m未満山行記録リスト

 

ホームページトップ